【調理場インタビュー】食べることを楽しみ、好きになるために。給食に込められた想いと工夫

大きな木保育園の子どもたちって本当によく食べるんです。我が家の息子たちも、入園前はごはんを全然食べてくれないことが多く、仕方なくバナナや赤ちゃんせんべいを食べさせてお腹を満たしていたのがウソのように、肉も魚も野菜もよく食べるようになりました。

そして、たまに保育参加したときに給食をいただくと、大人も美味しくておかわりが止まりません。その秘密を探るべく、今回のインタビューは、大きな木保育園が大切にしている「食」の文化について、園長や調理スタッフ(給食さん)たちに話を聞きました。

アレルギー対応についてや、食べない子にはどうしたらいい?という家での食生活のアドバイスももらってきました。

▲ひな祭りの日の献立。

 



◆調理場では朝から包丁の音が響きます。

 ーおはようございます!今日のメニューはなんですか?

給食さん「一番の人気メニュー、肉じゃがと納豆ごはん!それに野菜の和え物、お味噌汁です。」



 ー今日のポイントはなんですか?

給食さん「大きな木の給食全部に言えることなのですが、煮物はお出汁をしっかり効かせるのがポイント。調味料の味にはしたくないので、必要最低限にしています。」


 ーどんな出汁ですか?

給食さん「定番の昆布や鰹ももちろんだけど、肉じゃがには干し椎茸、納豆もお出汁をたっぷり混ぜちゃう。和え物には手作りの梅酢を使っています。自然のものから作る、自然の恵みを口に入れるということを大切にしています。」


 ー家ではつい調味料たっぷり使っちゃいます・・・

給食さん「最初から味を濃くせず、ちょっと置いて、徐々に味を足していくようにしています。お味噌汁も、10時頃の出来立ては薄く感じても、お昼に食べる頃には野菜の出汁が染み出してよーく味が染みるんですよ。」

園長食品そのものの味を楽しんでほしいよね。冬のキャベツ甘いなぁとかね。」

 


◆ 外で思いっきり遊んだ子どもたちがお腹を空かせて帰ってくると、お出汁のいい匂いが迎えてくれます。自分で椅子やお箸を準備する子も。

 ーみんな給食が待ちきれなさそうですね。

園長「お腹ぺこぺこになるまでしっかりと遊びこむ!そうすれば自然と楽しく食べられるから。」

ーオープンなキッチンだとお互いの姿が見れて良いですね。

給食さん「子どもたちも料理に興味を持ってくれて、“今日のお味噌汁の具は何?お魚はなんの魚?“と質問してくれたり、コミュニケーションをとっています。」

 ー印象に残ってる子どもたちの反応はありますか?

給食さん「食べてる姿が見えるので、硬いって言ってるな〜とか、苦手なものこっそり隠してるな〜とか、観察してます(笑)やっぱりおかわり〜って器を持ってきてくれるのを見ると嬉しいですね。」

 




◆ 口に入るまでの過程にも興味を持ってほしい。園の畑もあります。

 ー最近は「食育」が重要だと言われたりもしますが。

給食さん「お肉も魚も野菜も、便利にカットされてスーパーに並んでるものも買えるけど、“勝手に出てくるもの“じゃないことを知ってほしい。大きな木は園の畑もありますが、子どもたちが畑でとってきた大葉を天ぷらにして出したりします。地面にあったものが材料になって、料理する人が火を加えて、口に入るっていうことを地続きで見てほしいなと思います。」

園長「4〜5歳になると、畑仕事することで野菜の成長や収穫を楽しんでもらいます。ピーマン苦手だった子も収穫して、パリピーにしたら・・・氷で冷やしてひき肉を乗せて食べるやつね、美味しい!って言ってた。野菜を油で炒めたら食べられる!って気がついた子もいたり。」



保護者「うちの子も、畑で採れた野菜を生でかじってみて、“にんじんが甘かった“とか“大根は辛かった“などと感想を話してくれました。畑で収穫した野菜を持って帰ってきてくれる時もありますが、自分が収穫してきた野菜はやっぱりよく食べます。」



◆小さいクラスから食べ始めました。「ぴっかーん」できるように、食べ方にも工夫が・・・

 ー小鉢から時間差で主菜や汁物、ご飯を出していくんですね。コース料理みたい!

給食さん「ご飯とおかずと汁物をバランスよく食べるって結構難しいんですよね。好きなものばかり食べちゃいますから。こうやって出していくと、“友達が食べてるから自分も“と自然に食べすすめていけるんです。」

園長「小さい頃は、お腹が空いている時に基本的に野菜から食べさせます。満腹になってしまうと、食べられなくなることがあるので。仲間のなかで刺激しあい、「ぴっかーん!(お皿が空っぽになること)」と嬉しそう。そうやって1つ1つ食べ切る喜びを知っていきます。
3歳くらいになると好き嫌いなども出てきますが、食べ切る力も育っています。4歳児からは自分たちで考えて行動させることを大切にしています。」

給食さん「5歳児になると、コース料理方式からバイキング方式に変わります(笑)大皿で出して、自分の食べる量は自分で考えてよそうようになります。時には食器を割ってしまったり、失敗しながら学んでいます。先日はサバの味噌煮を出した日に、年長さん1人が代表して「あと5切れください!」って言いにきたんです。誰がおかわりしたがっているかを自分達で数えて取りに来てくれて、すごいなあと思いました」


▲自分で給食をよそう年長児たち

 

◆歯ごたえも大事

 ー家では食べやすいように柔らかい物や細かく切ったものを出していましたが・・・

給食さん「園では、茹ですぎない・小さく切りすぎないことも意識しています。こんにゃくも自分で噛み切れる大きさにしたり。最初に大きな木保育園の給食を見た時、さんまを2つに切ったのに 1歳児たちがかぶりついていたのでびっくりしました(笑)」

園長「咀嚼も大切にしていて、0歳児からごぼう煮、スルメ、コンブなども取り入れています。咀嚼することで、見る力や話す力などにも良いとされています。」



◆季節ものや行事食の日は、献立の成り立ちや食材のお話を聞きます。

給食さん「お月見団子、春の七草など、季節のものはよく取り入れています。節分の日は、イワシは骨がたくさんあるから鬼は苦手なんだよーとか園長が話してくれて。子どもたちも興味を持つとやる気を出して食べています。」

▲節分にはイワシの丸干しが出ました。

園長「四季を感じて生活することの幸せを感じながら食事したいと思っています。節分、ひな祭り、七夕など、古来から伝わる行事は子どもにとっても大人にとっても成長を確かめ合い喜び合う瞬間です」

保護者「ひな祭りの日の給食で蛤のお吸い物が出たんですが、お休みの日に園長が蛤を千葉の魚市場まで買いに行ってくれたと聞いて感動しました。お雛様とお内裏様を模したコロッケなど、見た目も可愛くて、愛情を感じた献立でした。忙しくて家でできない時でも、子どもたちに行事を味合わせてあげられるのでありがたいです。」

▲季節の野菜、うどと菜の花の和え物も。ほろ苦かったけど、小さいクラスの子たちも「ぴっかーん」していました!

 


◆食材へのこだわり

 ー自ら仕入れに行ったり、食材へのこだわりがすごいですね!

園長「普段は生協を中心に、やはり国産にこだわりたい。四季を感じられる旬のものをなるべく取り入れて。季節のものを食べると風邪をひきにくいと言われています。うちの夫が子どもたちに食べさせたいと、旬の魚、花ダイやイサキなど・・・を釣ってきて捌いてくれたりもしています。」

給食さん「うちの給食は本当に贅沢だなって思います。」

園長「そして、農薬の少ないものを選んでいます。例えば、外国のバナナって農薬がすごいのも多いんだけど意外と知られてないよね〜」

 ードキッ・・・

給食さん「ところてんを1から作ったり、働き出した頃はこだわりにびっくりしました。ハヤトウリのぬか漬けだったり、コリンキーというカボチャを使ったり、珍しい食材を使うのも面白いです。」

園長「年長さんに沖縄出身の子がいるから、みんなでムーチー作ったのも楽しかったね。交流のある沖縄の保育園から、ムーチーに使う月桃の葉っぱをとっても綺麗に送って来てくれました。」


▲紅芋入りのお餅を月桃の葉っぱに入れて蒸しました


◆お昼寝のあとは、手作りの素朴なおやつ。

 ー今日のおやつは・・・お好み焼き!お菓子じゃなくて「軽食」ですね。

給食さん「大きな木保育園のおやつは、夕方もたくさん遊ぶためのエネルギー補完が目的。お昼寝しただけなのにそんなに食べるの?ってくらいみんな食べます(笑)」

 ーおやつの時間には、園児のお誕生日会も開かれますね。

園長「子どもが生まれた喜びは感動そのもの!いくつになってもお祝いって嬉しいよね。
大切な1日をみんなでお祝いしたい。大きな木では、その子が好きな食べ物や飾り付けをリクエストすることでお祝いします。担任がリクエストを聞いてメニューを考えるんだけど、「ザリガニ〜」とか、「クワガタ〜」って言われた時は担任力が問われたりする(笑)色々工夫するのも愛情、想いがあって素敵だよね。」

 

▲2歳になった園児のリクエストメニュー、ひよこのちぎりパン。他の園児も大喜びで盛り上がりました。

 

◆アレルギーがある子も楽しく食べて欲しい

保護者「うちの子はアレルギーがかなりひどくて、家でもソイミートを使ったり米粉を使ったりしていましたがなかなか美味しくできなくて。保育園の給食のメニューはとってもよく食べます。」

給食さん「友達と一緒に食べるのが嬉しいと思うので、代替食材でも同じような見た目や美味しさを目指して作っています。卵焼きだったらかぼちゃを使ったり。また、徐々に食べられるようになったり、この魚は×だけどこの魚は食べられるなんてこともあるので、一律N Gではなく、親と相談しながら細やかに対応してくれていますね。

例えば、小麦粉なしでも、こんなに美味しいじゃん♪って言われるようにチャレンジしたい。米粉にしてみたり、豆腐にしてみたりね。逆にみんながアレルギー対応の物を欲しがる時もありますよ(笑)」




◆給食を保育士も楽しみにしています。大人が楽しそうに食べる姿を子どもにも見せたい。

 ー保育士さんに一番好きなメニューを聞いてみようと思います。

保育士「うーん、あんかけかなぁ・・・いや、トマトのあれもいいな・・・でも春雨サラダも好き」
園児「ぼくは麻婆豆腐!」
保育士「あっそれ!私も麻婆です(笑)月曜日に一週間の献立表をチェックして、毎日の楽しみにしています。」

給食さん大人が食事を楽しんでいれば、子どもも楽しむ!と思ってます。自然と食べることが好きな子に育つんじゃないかなあ。だから保育士も喜ばせたい。大人の味と子どもの味で調整しやすいように、ソースやドレッシングを使ったり、工夫しています。」

 



◆大きな木保育園にとって、「食」とは・・・

給食さん食べることは生きる意欲そのものです。みんなの美味しくて嬉しい顔を想像するとやる気スイッチが入ります。」

園長「人を良くするって書いて食。生活の基本中の基本!」





◆子どもが少食・偏食などで悩む親へのアドバイス

 ー子どもが好き嫌いが多かったり、なかなか食べてくれなくて料理したり食事をさせることに疲れている親も多いと思うのですが・・・

給食さん食べさせることは目的じゃないよ。いっぱい遊ぶために食べるんです。食べないってことはお腹が空いてないんじゃない?思いっきり遊んでお腹を空かせて、みんなで食べよう。一度食べれたって自信になるから、保育園に来て!(笑)ちなみに、うちの子も、家ではキノコ食べないんだけど、保育園では食べてたみたい。“あいつが食べてるからオレも食べる“ってあるよね。そういう時は食べなよとは言わずに「へー」って言ってます。元気なら大丈夫!」

園長うちの子は食べないという固定概念は持たない方が良い。親の思い込みで、食事に出さなかったりお弁当に入れなかったりするけど勿体無い。普通に食卓に出て親も食べていれば自然に食べるようになるよ。

甘いもの、嗜好品・・・カップラーメンなどを食べていると、いろんな食材を食べることがなかなか難しいので、保護者にはなるべく止めようとお願いしています。ジュースやヤクルトも甘いよね。
生活面で大事なのは、リズムを整えること。早寝早起き!

そしてしっかりと朝から遊びこむ!お腹ぺこぺこになるまで遊ぶ!ただダラダラ遊ぶんじゃなくて、遊びの中に達成感を作るのも大事。大人も集中してやりきったあとは食欲が湧くよね?子どもも同じなんです。
一緒に作ることから楽しむのも良いよね。餃子や焼売を包んだり、手でちぎったサラダも楽しいね。最初は茹で卵の皮むきもおすすめ。」


読んでいただきありがとうございました。私たちの大切にしている「食」への想い、伝わりましたでしょうか?
大きな木保育園では、体験入園や保育参加した日に保護者も給食を食べることができます。どうぞ自慢の給食も体験しに来てくださいね。そして美味しく食べるために、一緒に朝から外で遊んでお腹を空かせましょう!

 

併せて過去のインタビューもどうぞ

◆【保育士インタビュー】前編 私が自分が通っていた保育園に保育士として戻ってきた理由

◆【保護者インタビュー】親も子も育った3年間。卒園後は帰る場所に。

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